彩雲国物語 『黎明に琥珀はきらめく』 感想 (その1)

  • 2008/05/01(木) 00:10:32

彩雲国物語 第16巻 『黎明に琥珀はきらめく』 (朝廷・御史台および紅家編)の感想(その1)です。投獄された絳攸と彼を助けようと奮闘する秀麗の姿が見られます。

*公式発売日になりましたのでネタバレ感想解禁!します。今回はこれまでの考察・妄想の答え合わせ&次巻への考察・妄想が大幅に入ってますので、その辺ご了承ください。

彩雲国物語  黎明に琥珀はきらめく (角川ビーンズ文庫 46-16)彩雲国物語 黎明に琥珀はきらめく (角川ビーンズ文庫 46-16)
(2008/04/24)
雪乃 紗衣

商品詳細を見る


今回は文鳥が大活躍でした!ただ、タイトルの「黎明」はともかく、「琥珀」の意味は結局作者様から何も言われませんでしたね。(あとがき読んでも書かれておらず)またいずれ作者様から何らかのコメントがあるかもしれませんので待つことにいたしましょう。

語るべき&語りたい点が多く、大変長い感想となりそうですので分割します。(その1)では、今回の主役、李絳攸から。

・人生の迷い子、ついに自立!:李絳攸

今回の絳攸話は一回で終わってその辺はよかったと思います。楸瑛のときが結構巻を重ねたのとは違い、すっきりしていましたね。ただ、このあたりが楸瑛と絳攸の武官と文官の違いというか、性質の違いというべきか、この巻では絳攸の心の旅路に焦点を当てていたのでダイナミックな動きとは若干縁遠かったですが、かなり感動させられたのも事実です。(不覚にもラストの過去話は泣けました)

絳攸自身の欠点、つまり親離れできない&公私混同&王をとるのか黎深をとるのかという二者択一を決められない……などが一気に出てきて、結局心身ともに疲弊しているところを見事に清雅と楊修に狙われ、吏部侍郎の座を追われてしまった……というくだりは、もう少し前の巻から楸瑛並に紙幅を割いても良かったかもしれません。特に絳攸と楊修の関係に関して。後付けなのでしょうから仕方ありませんが、少々唐突だった気もしました。

そして、投獄され、様子を見にきた劉輝の目を見た途端、縹家の暗示が発動して精神を壊されかけ、夢の中でも迷子になってしまった絳攸。絳攸らしいですよね。ただ、彼はせっかく友人や家族や弟子がいるにもかかわらず、自らの殻の中に入ってしまって、なんだかもどかしかったです。ただ、絳攸にとっては必要な過程だったのでしょう。それでも、楸瑛と違って、花菖蒲が彫られた佩玉をずっと握りしめたままだというところ、佩玉が絳攸の精神への入り口として使われるあたり、なかなか小道具としては効果があってよかったです。

後でも触れますが文鳥がいなければ復活できなかったかもと思うと、本当に絳攸は愛されているなあと思います。家の思惑にとらわれている楸瑛と違って、絳攸は人との関わりがあってこそ迷ったり、逆に迷いから目が覚めることもあるという点はとてもリアルだと思います。ただし、ずっと官吏としてはエリートコースだったにもかかわらず、なかなか大人になりきれていなかった点に関しては、あの黎深のお守をしなければならなかったことを差し引いてもちょっと遅いかな。(このあたりは楊修の思いと近いですね。彼についてはまた別項で)

さて、黎深との親子関係は、あまりに黎深が不器用すぎて、なかなか黎深の思惑が見えず、真面目すぎる絳攸(および読者)はそれでまた迷う……と。ただ、うまく謎ときと結びついていて面白かったですけれど。

それにしても自分の権限以上の仕事をしたり、人事権の濫用ともとれる行動を変だと思ってないっていう部分そのものが、有能だとされている絳攸にしてはかなり迂闊ですよね。若さゆえの突っ走りといえば聞こえはまだましなのかもしれませんが、それにしても……というところですか。

*これを言ってしまうとどうしようもないですが、作者様の最初の設定不備のツケをキャラクターが払っている部分が多々あって、うまく成長に結びつけるのに苦心したのかな?と思わせられた部分です。確かに自然に持っていくのは難しいのかもしれませんけれども。

意外だったのは、絳攸までも縹家の暗示に引っ掛かってしまうという部分。縹家も容赦ないですね。秀麗を手に入れるため(?)かどうかは知りませんが、何のために?という気がして。おそらくはまた次の巻のための伏線ですよね。

絳攸・百合・黎深の親子関係はかなり健全だったんですね。ただ、百合も黎深も絳攸に対して何も望まなかったことがかえって仇になってしまったというのは何とも不器用です。確かに百合も黎深も家族愛に乏しい過去を持ってますからね。それでも百合さんはいい人でしたし、黎深も結構な親バカぶりでした!この辺もまた別項で。

名付けのくだりがかなり笑えました。百合さんのネーミングセンスはひどいですねえ。「倶利伽羅」絳攸はいくらなんでもなしでしょうと。

絳攸が目覚めた後、一番に探したのが秀麗……という部分。おお、ついに李姫か!?と一瞬期待してしまいましたよ。確かに台詞は思いっきり李姫でしたが、その意図はなんとも清らかな師弟愛……。ああ、ここも恋愛フラグは立たずですか。なんだかはたで見ている楸瑛ともども不憫な気持ちになったのはなぜでしょう。

自ら養い親である黎深との親離れを吏部尚書弾劾という形で行った部分は、見事な展開だったなと思います。非常に流れも自然で納得できて、作者様の筆の冴えを感じた部分でした。

ラストの短編「光の記憶」は本当に良かったです。私はベタな展開に弱いので、こうこられるともう駄目ですね。最後で文鳥になってしまった最初の両親たちの思いが本当に伝わってきました。そして、絳攸の元の名前は「コウ=光」だったんですね。素敵な名前だと思います。*コウの漢字、一瞬アニメの静蘭役の声優さん緑川光さんから取ったのか?と思ったのは私だけではないかも。。。

いずれにせよ、『白百合』ともお話がつながっていて思ったことですが、あらためて絳攸の人柄の良さを感じました。これを読んで、もしかして悠舜の次の宰相は絳攸なのかな?という気がひしひしとしてきました。彼に治めてもらえればきっと彩雲国はいい国になると思いますよ!(できれば悠舜と一緒に合議制の宰相という形が一番うれしいんですが。もしくは、今空位の宰相扱いの中書令でもいい!)

もちろん、一からの出直しになりますが、今度こそ彼なら見事に成長していけると思います。その前に、方向音痴は直しておいてほしいですけれど、そのあたりはどうなるんでしょうかね。

私は悠舜に続いて絳攸も大好きなので改めて惚れ直しました!ってことで、ここはこれまでにします。

(その2)では秀麗他若者組に関する感想を書きたいと思います。

この記事に対するコメント

こんにちは。
今回は大好きなキャラの1人・李絳攸さまに深いところに焦点が当てられていて楽しかったです。ますます絳攸さまを好きになってしまいました。官吏として優秀な李絳攸。そんな彼が、官吏としての判断を狂わせてしまうほど「紅黎深」の存在が大きい、ということがわかりました。あと、それほど「紅黎深」が強烈な個性の持ち主なのかなとも思いました。「特別な存在」の影響力という点で、とても面白かったです。

>「一番に探したのが秀麗……という部分」
私もかなり期待しちゃったんですけどね・・・あのシーン。わたしも個人的に秀麗と絳攸さまのカップルが好きです。「師弟愛」止まりとは少し残念。いえ、まだ、望みはかけたいと思います。(笑)今後の絳攸さまの心の変化に期待します!!

>百合さんのネーミングセンス
「倶利伽羅絳攸」発言の直後、私は「さすが黎深さまの奥方!!」と思いました。(笑)黎深さまの奥さんは百合さん以外考えられないけれど、百合さんの旦那さんも黎深さま以外考えられないなぁ、考えました。

  • 投稿者: 香澄
  • 2008/05/01(木) 15:05:18
  • [編集]

初めまして。以前からこそこそとのぞかせて頂いております。
語りたいことはいろいろあるのですが、コメント欄ですし一つだけ。
琥珀の意味についてですが、あれは過去・現在、そしてもしかすると未来の絳攸を指しているのではないかと思います。
絳攸自身が忘れてしまっていた百合がくれた大事な言葉、さらに本当に忘れてもう思い出すこともない原点の記憶、さらに、術をかけられて内に閉じこもってしまった絳攸自身。ここらあたりが作中描かれた部分ですね。
さらに、ちょっと「琥珀」でググってみたのですが、ヨーロッパでは結婚10周年に琥珀を贈ったりするそうですが、その意味は「琥珀」=「幸福」で、とどのつまり「幸福を贈る」だそうで……。ラストの話の「私たちの幸福の子」にかかっていますね。
実際のところは蜂蜜檸檬水さんがおっしゃるように作者さんにしかわかりませんが、私はそう推察しました。

それにしても蜂蜜檸檬水さんの考察にはいつも感心させられます。
これからも楽しみにしていますね。

  • 投稿者: 蜜豆
  • 2008/05/01(木) 19:54:30
  • [編集]

色々な意味が……

香澄さま、蜜豆さま

コメントいただきましてありがとうございました。
お二方の感想も楽しく読ませていただきました。

香澄さま
李姫になりそこなって残念でしたよね。また何かあることを期待しましょう。

蜜豆さま
琥珀にそんな意味まであったとは驚きです。奥が深いですね。

簡単な返信ですみません。

  • 投稿者: 蜂蜜檸檬水
  • 2008/05/06(火) 21:16:28
  • [編集]

コメント投稿

管理者にだけ表示を許可する